海外での医療費負担が重くなる原因は?
新興国の経済発展をはじめとするマクロ的要因や日本企業のグローバル化が加速する事で、今後ますます企業の海外医療費負担が増える事が予想されますが、残念な事にこの流れを止める事は難しいのが現状です。しかしながら、企業が出来る範囲で出来る事を確実に行うことで、海外医療費負担の増加に歯止めをかけることも十分に可能です。
そのためには、先ず負担増加に繋がりかねない原因を知ることが必要となります。
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海外駐在員の自己負担が少ないと企業の海外医療費負担が増す
私達が日本国内で病院にかかった場合、否応なしに本人が医療費の三割を負担する必要がありますが、海外においては多くの企業が自己負担無し、もしくは日本と比べると自己負担の割合を少なく設定しています。「海外赴任」という重要な責務を負い、住み慣れない国での生活を余儀無くされることを考えると、福利厚生の観点から日本の従業員より幾分優遇せざるを得ない事は十分理解出来ます。しかし行き過ぎると、特に本人の自己負担が全くない場合は、企業の海外医療費負担を押し上げる最大の原因となります。この事はデータでも立証されており(PDF資料参照)、自己負担割合と通院回数は確実に反比例する関係となります。本来必要の無い通院が多いと断定は出来ませんが、自己負担が無い、または少ない事で、ちょっとした事でも通院するという環境になりやすいと言えそうです。
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補償範囲が広いと企業の海外医療費負担が増す
日本と海外の医療事情は大きく異なります。例えば日本では健康保険の対象外となっている様々な先進医療や歯科における特別素材(ポーセレン・メタルボン・金合金等)の多くは、米国等では一般的な診療項目として現地医療保険で対象となっています。特に歯科に関しては、日本の健康保険で対象となる素材を使って治療を試みようとすると、現地の歯科では元々その素材を扱っていないため、仕入費用が発生する等して、現地での一般的な治療水準より高くなってしまうケースもあります。企業にとっては、このような「現地事情」をどこまで汲み取って、駐在員に対して海外医療費を補償すべきか非常に悩ましい問題となっていますが、結果的に日本では国内健康保険対象外となるような医療費についても、海外では補償するというケースが多く見られます。そのようなケースでも、殆どの企業は必要最低限の「現地事情」に絞った上で補償範囲を決めたり、保険のタイプを選択していますが、ごく稀に、過度に補償範囲を広げている企業もあります。その場合は、駐在員によっては「海外にいる間に治せるものは治しておく」という意識が芽生え、特に審美的効果のある歯科のケースで海外医療費負担を押し上げる原因になっています。
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その他
それ以外に企業としてはコントロールが難しいところですが、家族を伴った赴任の割合や、都市部の駐在割合が高い場合も、海外医療費負担を増加させる原因になるようです。 家族同伴の場合、特に小さな子供を伴う場合は大人以上に病気になる頻度も高いですし、親心としては、ちょっとした事でも医者に診てもらいたいというのが常だと思います。また都市部への駐在割合が高い場合、都市部は比較的病院に行き易い環境が整っていますし、一般的に物価も高いことから、その一因に上げられています。
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