海外医療費を抑えるためのポイントとは?
多くの企業にとって、コスト削減が海外進出の大きな理由の一つと考えられる一方で、海外医療費やその他の福利厚生費用は、“海外駐在”という重責が考慮され、削減の対象にしづらい部分となっていますが、将来に亘って確実に海外医療費の高騰が予想される中、何もしないままでは着実に海外医療費のコスト負担が積み重なり、海外進出の目的達成の障害になるという本末転倒な結果を招きかねない恐れがあります。
では、どうすれば海外医療費負担を抑えられるのか?前コラムでも述べましたが、マクロ的な要因以外に、企業が出来る範囲で出来る事を確実に行うという意思と実効力が必要とされます。
具体的には、「自己負担割合」と「補償範囲」にフォーカスする事が効果的と考えられます。この二つをどう設定するかが海外医療費を抑制するための鍵となりそうです。その鍵を握るのが「国内健康保険の有効活用」です。
前コラムで述べた通り、海外医療費を国内健康保険に請求する海外療養費制度は、手続きの煩雑さが嫌がられ、あまり積極活用されていないのが実情です。しかしこの制度を有効活用することで、自己負担割合や補償範囲を効果的に設定するツールになり得るのです。
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自己負担割合について
国や地域に関係なく一律で同じ自己負担割合を設定すると、それぞれの医療費水準により駐在員の負担額も変わることになります。しかし「健康保険の3割」として設定すると、駐在員は国や地域間の医療費水準に関係なく、「日本で治療を受けた場合の3割相当分」を負担することになるので、公平感・納得感のある形で医療費の抑制が可能となります。また全般的に海外は医療費が高いため、医療費総額の2~5割程度しか健康保険から還付されませんので、還付金を超過する内外格差の部分のみを企業が補償する(または保険でカバーする)形にすれば、企業としての海外医療費負担を抑えることも可能となります。
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補償範囲について
国内健康保険と企業の福利厚生上の補償範囲を合わせることで、先に述べた自己負担割合と同じく公平感や納得感のある形で海外医療費の抑制が可能となります。ところが前コラムで述べた通り、「海外事情」と国内健康保険の補償範囲が大きく乖離する国・地域については、最低限の「海外事情」を考慮した上で医療補償範囲を設定する必要があります。
国内健康保険の有効活用は海外医療費負担を軽減する上で非常に有効的なツールである一方、多くの健康保険組合が赤字運営を余儀なくされているという厳しい現実があります。駐在期間中であっても駐在員と企業がそれぞれ国内健康保険料を負担しているわけですから、国内健康保険を活用する権利は有しているわけですが、少なからず「国内健康保険の有効活用=国内健康保険組合の負担増加」と言えますので、特に自社で健康保険組合を運営している企業は健康保険組合も含めた企業全体における海外医療費抑制の効果を検証する必要があるでしょう。
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